三善晃は武満徹と並んで、20世紀後半の日本を代表する作曲家だと思います。Amazon Music でどんな曲が聞けるのだろうかと、「三善晃」で検索してみました。

うーむ。悲惨な結果ですね。テレビアニメの主題歌と入門用のピアノ練習曲のみ。
試しに「武満徹」でやったら、こんな結果。

代表作ノヴェンバーステップは入っていますが、他は映画音楽など軽い曲ばかり。
三善も武満もCDはかなりの数が制作されていて、現在でもインタネットなどを使えば、手に入れることは出来ます(武満の場合は小学館より全集も発売されていて、これも現在入手可能なようです)。
一柳慧、柴田南雄、湯浅譲二、入野義朗などでも調べてみましたが、同じような結果でした。「こりゃ使えない、駄目だ」ですね。
それじゃ海外の作曲家だとどうかと考え、クセナキスで検索。

素晴らしい。
画面は一部ですが、ペルセファッサ、ペルセポリスなどがあります。Allで表示させると、あるわあるわ。1950年代から1990年代まで主要な作品を全て聴くことが出来ます。
プーレーズ、ノーノなどでも、同じように重要な作品を全部ストリーミングできます。
「困ったものだねぇ」と調べたら、三善作品についてはYouTubeでほとんどの作品を聞くことが出来ると分かりビックリ。初期のオーケストラ作品、中期のレクイエム他の反戦三部作、後期の交響四部作、協奏曲、室内楽曲、声楽曲、合唱曲全てのジャンルの作品がアップロードされています。録音も良いものが多く、初演時の古い録音も網羅されていて、素晴らしい。これらを何回かに分けてご紹介していきます。
三善晃の作品表はこちらにあります。これを参考にしながら、捜してみました。
オーケストラ作品(協奏曲、声楽合唱付き作品を含む)
三善晃のオーケストラ作品のリストはこちらにあります。
三善のオーケストラ代表作は中期のレクイエム他の反戦三部作、後期の交響四部作となるかと思いますが、初期の精緻な作風のオーケストラ、協奏曲作品も魅力的です。YouTubeでは初期の作品を含め、ほとんどを聞くことができます。
交響的変容(1958年)NHK交響楽団 · 岩城宏之
アップローダーはNHK交響楽団。℗ 2012 Naxos Japan とありますので、ナクソスのCDを同意を得て公開されているようです。放送用の録音だと思います。多分、同じ放送録音をアップロードしたものがここにあります。
交響三章 (1960) 渡邉暁雄指揮 日本フィルハーモニー管弦楽団
「1962年1月8、9日杉並公会堂にて録音」とありますので、初演直後にLPレコード用に録音された演奏だと思います。他に
- 森正指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (NHK FM放送からカセット録音 1984/4/5)
- Japan Philharmonic Orchestra Akeo Watanabe, conducted Recorded:April 24th, 1981 (Live) at Tokyo Kōsei Nenkin Kaikan
- Japan Philharmonic Symphony Orchestra diretta da Akeo Watanabe
二番目と三番目の演奏は7秒程時間が違いますが、同じ録音ではないかと思います。録音日時と場所からみて、多分このLP録音だと思います。
ピアノ協奏曲(1962年)Reiko Honsho, piano Yomiuri Nippon Symphony Orchestra, Tokyo Hiroshi Wakasugi, conducting Recorded: July 23, 1970
1970年に発売された「三善晃の音楽」というLP3枚組のための録音。他に二つの素晴らしい演奏がアップロードされています。
21世紀の新しい録音と解釈という観点では、岡田さんの演奏がお勧めかもしれません。
ただ、この曲が初演された当時の厳しい表現が懐かしく(^^;;;、本荘さんの録音を埋め込みました。
中村さんの演奏も彼女らしい繊細だがダイナミックな表現で興味深いです。これもお勧めですね。
管弦楽のための協奏曲(1964年)NHK Symphony Orchestra, Hiroyuki Iwaki (1972)
ちょっと古いのですが1972年に発売されたLPレコードの録音です。作者がこの曲はシェーンベルクの5つの管弦楽曲にインスピレーションを得て作曲したと言っていますので、楽譜付きの動画がよかろうと考え、岩城宏幸指揮N響の演奏を選びました。YouTubeでは他に二つの録音がアップロードされています
どれも素晴らしい演奏でお勧めです。尾高さんのものは演奏会の動画風景と、曲の終了後、三善さんインタヴュー付きですので是非ご覧ください。
あと埋め込んだ録音と同じものがここにもアップロードされています。
ソプラノと管弦楽のための「決闘」(1964) 天羽 明恵(ソプラノ)沼尻 竜典:指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団 文京シビックホール 大ホール 14 Oct.2004 Live Recording
初期の傑作ですね。この曲は萩原朔太郎の詩に管弦楽が付いています。詩の内容を理解しないと曲の面白さは半減すると思います。コメント欄に引用されていますので、必読です。
「管弦楽のための協奏曲」と「決闘」が同じ1964年に続けて作曲されているのは興味深いです。「管弦楽のための協奏曲」は、1964年オリンピック東京大会協賛作品としてNHKより委嘱されたわけですが、自身初の12音の作品。一方「決闘」は中期以降のレクイエム三部作につながる作風。違う傾向の曲を平行して作曲というところがというところが三善流ですね。
ヴァイオリン協奏曲(1965) ヴァイオリン:数住岸子 指揮:外山雄三 演奏:NHK交響楽団
この曲もこの他に江藤さんと堀米さんの録音がアップされています。
堀米さんの演奏は 20 March.2003 Live Recording。こちらの方が作曲後40年経過した円熟した演奏で、録音も良いからお勧めかもしれません。また作者のプログラムノートがコメント欄に掲載されています。これは曲を理解するのに必読です。
江藤さんの演奏は、上記ピアノ協奏曲と同じく、1970年発売の「三善晃の音楽」に収録されているものだと思います。同じ録音と思われるものがここにもアップロードされています。
変容抒情短詩(1969年)指揮:若杉弘 演奏:読売日本交響楽団
これも1970年に発売された「三善晃の音楽」というLP3枚組のための録音だと思います。
マリンバと弦楽合奏のための協奏曲(1969年) 安倍圭子:マリンバ 石橋義也指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
音源 NHK FM放送からカセット録音 1983年5月25日 だそうです。面白い曲ですね。
他に二つの演奏がアップロードされています。
加藤さん動画は演奏、録音共に素晴らしい。お勧めです。
祝典序曲 (1970) 若杉弘指揮 読売日本交響楽団
Recorded: 1970 とありますので、1970年万博に合わせて発売されたLPに収録された録音だと思います。
この曲はピアノ協奏曲でリンクした 20 March.2003 Live Recording 東京オペラシティコンサートホール:タケミツ メモリアルの沼尻、東フィルの演奏会 でも取り上げられています。こちらの方が新しい録音なのでお勧めかもしれませんね。
初期はここまで。こうして見ると交響三章、ピアノ協奏曲、管弦楽のための協奏曲、決闘、ヴァイオリン協奏曲など傑作だらけです。これらの作品を全部YouTubeで聞けるとは良い時代になったものです。
ここから、三善は大きく作風を変え、戦争三部作を中心とする中期の創作活動に入ります。
レクイエム 混声合唱とオーケストラのための(1971年)山田和樹 / 東京混声合唱団 / 武蔵野音楽大学合唱団 / 東京都交響楽団
Subscription Concert No.975 A Series Fri. 12 May 2023, at Tokyo Bunka Kaikan Kazuki YAMADA, Conductor The Philharmonic Chorus of Tokyo, Chorus Yoshinao KIHARA, Chorus Master Musashino Academia Musicae Chorus, Chorus Hiroki FUJII, Chorus Master Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
2023年3月の定期公演での演奏。演奏風景&歌詞表示有りですので、最初はこれで聴くとよいでしょう。
三善の最高傑作ですから、他にも三つの録音がアップロードされています。
- 指揮:岩城宏之 演奏:NHK交響楽団 合唱:日本プロ合唱団連合 1971年初演ライヴ
- 指揮 外山雄三 日本フィルハーモニー交響楽団 日本プロ合唱団連合 合唱指揮 田中信昭
- 沼尻 竜典:指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団 東京混声合唱団 東京大学柏葉会合唱団 合唱指揮: 田中 信昭 文京シビックホール 大ホール
外山、日フィルの演奏は1977.3.10 東京文化会館 日本プロ合唱団連合7回定期演奏会実況録音はというLPで発売された録音です。最初の二つの録音はどちらも初演直後の緊張感にあふれるものです。
最後の録音は、「ピアノ協奏曲 (岡田博美)」と同じく、2003年沼尻、東フィルの三善作品シリーズの演奏の一つです。こちらの方が曲を知るには良い演奏だと思います。
- 混声合唱と2台のピアノによるレクイエム 第1楽章 指揮:山田和樹 合唱:東京混声合唱団 東京大学柏葉会合唱団OB・OG有志 ピアノ:中川俊郎 新垣隆
- 混声合唱と2台のピアノによるレクイエム 第2楽章 指揮:山田和樹 合唱:東京混声合唱団 東京大学柏葉会合唱団OB・OG有志 ピアノ:中川俊郎 新垣隆
- 混声合唱と2台のピアノによるレクイエム 第3楽章 指揮:山田和樹 合唱:東京混声合唱団 東京大学柏葉会合唱団OB・OG有志 ピアノ:中川俊郎 新垣隆
ピアノ2台による編曲版です。編曲は新垣隆。
チェロ協奏曲第1番(1974) 初演 チェロ:堤剛 指揮:若杉弘 読売日本交響楽団
この曲は1973年にニッポン放送の委嘱をうけ、作曲され、1974年に文化庁芸術祭で大賞、翌年に尾高賞を受賞しています。埋め込んだ演奏は、初演とありますので、この1974年文化省芸術祭参加の放送録音だろうと思います。
YouTubeにはもう一つのアップロードがあります。1977年4月の録音でLPレコードとして発売された録音です。
指揮:若杉弘 演奏:東京都交響楽団 チェロ:堤剛
こちらの方が録音が良いですからお勧めかもしれません。
レオス オーケストラのための(1976年) 沼尻 竜典:指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団 25 March.2004 Live Recording 東京オペラシティコンサートホール:タケミツ メモリアル
2004年沼尻、東フィルの三善作品シリーズの演奏の一つです。
この曲は京都市交響楽団の委嘱で作曲されたものですが、初演直後に録音されたLPレコードがあります。その演奏はこちら。
指揮:小泉和裕 演奏:京都市交響楽団 京都市委嘱作品 初録音盤
ノエシス オーケストラのための(1978年)指揮:尾高忠明 演奏:読売日本交響楽団
この録音は1997年に発売された次のCDの演奏だと思います。
同じ録音がここにもアップロードされています。
混声合唱とオーケストラのための《詩篇》(1979) 指揮/山田和樹 東京都交響楽団 合唱/東京混声合唱団、武蔵野音楽大学合唱団
Subscription Concert No.975 A Series Fri. 12 May 2023, at Tokyo Bunka Kaikan
2023年3月の定期公演での演奏。レクイエムと同じ演奏会です。演奏風景&歌詞表示有りです。
また前日の練習風景の動画もここにアップされています。
三善の作風の変化については1970年代と1980年代で区切る考え方があるようですが、ここでは続けます。
アン・ソワ・ロアンタン(1982年)ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮 読売日本交響楽団
1982年12月8日 東京文化会館 世界初演 音源 NHK FM放送からカセット録音 1983年5月25日。
この作品は素晴らしい曲だと思いますが、意外に録音が少ないですね。残念。
童声合唱とオーケストラのための響紋(1984) 山田和樹 東京都交響楽団 児童合唱:東京少年少女合唱隊
Subscription Concert No.975 A Series Fri. 12 May 2023, at Tokyo Bunka Kaikan
あと二つアップロードされています。初演と再演。どちらも素晴らしい演奏です。
- 東京フィルハーモニー交響楽団 尾高忠明 1984.6.23 東京文化会館
民音のコンサートでの初演の録音だと思います。同じ録音がこちらにもアップロードされています。 - 沼尻 竜典:指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団 東京少年少女合唱隊 合唱指揮: 長谷川 久恵
25 March.2004 Live Recording 東京オペラシティコンサートホール:タケミツ メモリアル
レクイエムと詩編と同じシリーズの演奏です。
尾高、東フィルの初演の録音はCD化されていて、ここにもアップロードされています。
交響詩「連禱富士」(1988) Japan Philharmonic Orchestra Kazuki Yamada, conducted [2015 Live]
Recorded: November 12th, 2015 at Suginami Koukaido Large Hall だそうです。調べたら、ここにCDの情報があります。
この曲はテレビ静岡開局20周年記念事業委嘱作品ですが、何故か秋山和慶、東京交響楽団1991年10月24日 ニューヨーク 国際連合総会会議場国連本部で演奏されています。どういう成り行きなんですかね。
他に BBC Symphony Orchestra, Kasushi Ono (Conductor) の演奏もアップロードされています。この録音も出所不明です。この演奏会の録音なのですかね ?
静岡放送の記念の会用の音楽ですが、素直にそうならないところが三善らしくていいですね(^^;;;。
Piano Concerto for 4 Hands and Orch(1989) Patrick Crommelynck and Taeko Kuwata – RTBF Philharmonic Orchestra
作品リストの「樹上にて 四手のピアノと管弦楽のための(1989年)」という曲だと思います。
ベルギーでの録音というのが珍しいです。初めてききました。ここ[(三善晃作品の隠れた音源(管弦楽・吹奏楽編)]の情報でこの録画の存在を知りました。感謝です。
弦の星たち(1991年)Violin Solo:篠原悠那 Conductor:山下一史
演奏メンバの詳細は以下の通りです。
2013.4.30 東京文化会館小ホール Violin Solo:篠原悠那 1st Violin:桐原宗生・石原悠企・伊勢久大・川上拓人・工藤 崇・横島礼理 2nd Violin:吉野 駿・秋葉彩恵・京極朔子・島内晶子・外園彩香・美島佑哉 Viola:飯 顕・内野佑佳子・小菅佐和子・山本 周 Violoncello:村井 智・春日真菜・日高航太・三井 静 Contrabass:小幡淳平・里見幸則 Conductor:山下一史
ヴァイオリンソロ 野口千代光、指揮 中川賢一、アンサンブル・ノマドの演奏もアップロードされています。こちらも素晴らしい演奏ですのでお勧めします。
魁響の譜(1991) 岡山シンフォニーホール開館記念委嘱作品 Tokyo Philharmonic Orchestra, Ryusuke Numajiri
岡山シンフォニーホール開館記念委嘱作品です。
このCiNiiのCDの録音のようです。この曲は吹奏楽による演奏がありますが、そちらは吹奏楽作品の方で紹介します。
続きます。