日本のクラシック系の作曲家で作品を作曲するだけで食べていける人はいないでしょうね。皆、テレビや映画音楽を作る、学校で教える、本業は別に持つなどいろいろな方法で、生計をたてることになります。三善も1974年に桐朋学園大学長に就任、1995年まで20年間以上その仕事を続けています。この間の主要な作品は詩編、響紋位でその前後の10年間と比較すると作品数は少なめです。そして、大学長から解放された1995年からの2000年までの5年間で「夏の散乱」「谺つり星」「霧の果実」「焉歌・波摘み」の交響4部作とオペラ「遠い帆」が一気に作曲されることになります。
谺つり星(チェロ協奏曲第2番)(1996年)チェロ独奏:伊東 裕 下野竜也指揮 広島交響楽団
2021年11月5日第416回定期演奏会の録音のようです(中国地方ローカルNHK-FMで放送されています)。埋め込み不可なので、YouTubeの動画にリンクしてあります。
「焉歌・波摘み」については前回ご紹介した沼尻 竜典:指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団 文京シビックホール 大ホール(14 Oct.2004 Live Recording)の演奏もアップされています。
詩鏡 (2000年)板倉康明(指揮)、東京シンフォニエッタ
2023年7月7日、東京文化会館 小ホール 東京シンフォニエッタ 第53回定期演奏会で録画された演奏です。
YouTubeで聞ける三善の管弦楽曲は以上ですが、作品リストにあるほとんど大部分の曲は網羅されています。残された曲については、ここ[(三善晃作品の隠れた音源(管弦楽・吹奏楽編)]に情報があります。
こうやって見ると、最初期(1954)の「ピアノと管弦楽のための協奏交響曲」とリスト最後(2001)の「三つのイメージ”」を除き主要作は完全にカバーされています。驚きました。
さて続いて吹奏楽です。これも年代順に紹介します。三善吹奏楽作品のYouTube録画数は多いので、ここでは演奏録画共に良いと思うものを一つだけ紹介します。他の演奏も聴いてみたいという方は「三善 作品名」でYouTube検索して下さい。山ほど見つかります。
三善は吹奏楽連盟の委嘱を受け1988年、1992年に課題曲を作曲しています。また彼の管弦楽作品のいくつかは吹奏楽用に編曲され、さまざまなバンドで演奏されています。バンドメンバに愛されるクラシック系の作曲家といえるでしょう。
吹奏楽作品
札幌オリンピックファンファーレ(1972) 古荘浩四郎 陸上自衛隊中央音楽隊
録音の詳細は不明です。
吹奏楽のための「深層の祭」(1988) 秋山和慶 洗足スペシャル・ウインド・ワールド
2024年5月5日(日) 洗足学園 前田ホール 吹奏楽の祭典Ⅱ〜洗足学園創立100周年記念演奏会での録画です。素晴らしい演奏だと思います。この曲は1988年の吹奏楽コンクール課題曲ですので、「三善晃 深層の祭」でYouTube 検索すれば他にも良い演奏は一杯出てきます。
スターズ・アトランピック ’96(1990年) 指揮:板倉康明 演奏:現代奏造Tokyo
現代奏造Tokyo 第8回定期演奏会 日時:2023年5月17日(水) 会場:渋谷区文化総合センター大和田4Fさくらホール。
以下このサイトからの引用です(一部文章を変更)。
アメリカ、アトランタ州のエモリー大学音楽学部委嘱作品。1991年4月、アトランタ州で催された「日米吹奏楽音楽祭」の席上でゲストコンダクター十束尚弘、エモリー吹奏楽団とアトランタ青年吹奏楽団の合同演奏により初演された。作曲者は『「日米吹奏楽音楽祭」が若い人達の祭典であることに加えて、たまたま作曲中にアトランタ市が1996年のオリンピック開催地に決まったこともあって、若い世代の交歓の場に贈る音楽を書くことにした。
吹奏楽のための「クロス・バイ マーチ」(1992) 指揮:板倉康明 演奏:現代奏造Tokyo
現代奏造Tokyo 第8回定期演奏会 日時:2023年5月17日(水) 会場:渋谷区文化総合センター大和田4Fさくらホール。(上のスターズ・アトランピック’96と同じ演奏会です)
以上3曲どれも三善さんらしい丁寧な作りの曲ですね。「吹奏楽ってうるさいだけ」と思っていましたが、これらは例外。楽しんで聴きました。
こういう曲を演奏すると、この作曲家の作品をもっと演奏してみたくなるのでしょう。結果、いくつかの三善さんの管弦楽曲が吹奏楽に編曲され、コンクールなどで演奏されています。
交響三章とか管弦楽のための協奏曲など、「こんな曲、本当にブラバンで演奏できるの !」という動画を発見しました。
また、メジャーな作品ではないため、吹奏楽編曲だけで聴けるという曲もあります。これらを紹介します。
YouTube動画を全部埋め込んでいるときりが無いので、全てリンクで処理します。また、数が多いので、代表的な演奏と思われるもののみ紹介します。他の動画はYouTube検索で「三善晃 作品名」で見つけられます。
交響三章より第3楽章 編曲:小澤俊朗 演奏:神奈川大学 指揮:小澤俊朗 第55回全日本吹奏楽コンクール
第1楽章/第2楽章はブラバン向きではないので(?)、第3楽章のみです。いろいろな楽団で取り上げられています。交響的変容も演奏されていますが、これはさすがに部分のみなので紹介は見合わせます。
管弦楽のための協奏曲 編曲:天野正道 演奏:秋田県立秋田南高等学校 指揮:奥山昇
管弦楽版をそのまま演奏することは困難なので、大きく編曲されています。「なるほどなぁ」という感想で、面白いです。
祝典序曲 遠藤 正樹 編曲 荒井 富雄 指揮 名取交響吹奏楽団
万博用に作曲された祝典音楽ですので、ブラバン用にピッタリです。原曲の爽快感が良く伝わります。
花火の音楽(1973年) 編曲 遠藤正樹 指揮:荒井富雄 名取交響吹奏楽団
花火の音楽より(1973) 木村一仁 編曲 仙台市立柳生中学校吹奏楽部 指揮:木村 一仁
花火の音楽については「三善晃作品の隠れた音源(管弦楽・吹奏楽編)」に紹介されています。引用します。
田中信昭の紹介によりPL教団花火大会のBGMとして作曲された管弦楽曲。三善晃作品中最大の50分の演奏時間を持つが、情報がほとんどない曲として知られている。1973年8月1日に山本七雄指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団により初演。
吹奏楽編曲版のみ録音が存在し、遠藤正樹編曲の名取交響吹奏楽団による特別演奏会のものと木村一仁編曲の仙台市立柳生中学校吹奏楽部による宮城県吹奏楽コンクールのライブ録音の二種類が存在するが、どちらも抜粋である。
管弦楽のための交響詩「連祷富士」 聖ウルスラ学院英智高 指揮:及川博暁
こういう演奏を聴くと、R・シュトラウスのアルプス交響曲もブラバンでやったら面白いかなと思いますね。
「よくやるものだ」と感心しました(^^;;;。
竹取物語 編曲:天野正道 指揮:奥山昇 秋田県立秋田南高等学校
この曲はWikiPediaの作品リストにありません。検索したら、こちらのリストに『バレエ「竹取物語」(1990) el-org, pf 4 hands』とありました。これを吹奏楽用に編曲したということらしいです。
以上で吹奏楽曲の紹介は終わりです。
ご存じのように、日本で吹奏楽は中学高校生達の音楽活動に大きな役割を占めています。三善のこのジャンルの作品は、手抜きのない真摯なもので、音楽教育への熱意を反映したものだと思います。
白状すると、僕はブラバンには興味はないので、過去に聴いたことのあるのは「深層の祭」だけ。まったく、このジャンルでの三善の活動を知らなかったのですが、素晴らしいですね。
また、編曲とはいえ、中学高校の部員が三善の主要作品をブラバンで演奏するという経験を若い時期にもてるとは羨ましい。クラシック音楽を深く理解するきっかけになるでしょうね。
さて、続いて室内楽、独奏曲に移りますが、その前にちょっと寄り道。
この分野は三善が積極的には関わらなかった分野です。YouTubeでは以下の四つの作品を視聴できます。
音楽詩劇「オンディーヌ」(1959年)
このLPレコードの録音をアップロードしたものだと思います。
春の坂道(1971) キンボー・イシイ – NHK交響楽団 N響大河ドラマ&名曲コンサート 2024年3月9日
結局、三善が作曲したのはテーマ音楽だけで、実際の番組内に挿入された音楽は間宮芳生が作曲しているのですね。「いかにも三善さんらしいなぁ」と感心。
テレビで放送された演奏はこちらで聞かれます(森正,NHK交響楽団)。
翼は心につけて(主題歌) 1978 うた 横井久美子
三善の唯一の映画音楽作品です。
赤毛のアン きこえるかしら(オープニング)、さめない夢(エンディング) 大和田りつこ 世界名作劇場1979
三善唯一のアニメ音楽です。三善について何も知らない人もこの曲は知っているでしょう。
合唱で歌われた動画も一杯あります。「三善 赤毛のアン」で検索すれば、大漁となります。
ここまできたら、その他のジャンルも気になりますね。ちょっと時間がかかると思いますが、室内楽、独奏曲に続くです。